
INFINITE JUDGE〜第4話〜
『現在佐世保は木星蜥蜴の襲撃を受けています。ナデシコはこれより第一次戦闘体制にはいります。乗員は速やかに持ち場に付いて下さい。』
艦内放送が鳴り響く。それを聞いて俺は耕介さんと顔を見合わせる。
「襲撃・・・例の奴等が攻めてきたってみたいですね。」
「ああ、そうみたいだね。しかし、俺たちどうしようか。」
現在のところ俺や耕介さんの立場は単なるコックとウェイター兼調理補助にすぎず、やれることはない。しかし、詳しい状況もわからないままなにもせずにいるというのは少し辛く感じる。
「格納庫の方にちょっと覗きに行ってみないか?もう少し詳しい状況がわかるかもしれないし。」
「そうですね。さっきのエステバリスって機体のパイロットの人達とかもいるかもしれないですし、ちょっと行ってみましょうか。」
耕介さんの提案に対し、火事場見物みたいで少々不謹慎な気もしたが、実際状況が気になるのは事実である。肯定し、格納庫へと向かった。するとなにやら騒がしい。出撃の準備か何かで忙しいのかとも思ったが、何か作業をしている訳でもない。その様子に気になって聞いてみることにした。
「どうかしたのですか?」
「ん、お前等だれだ?」
俺の問いかけに30代半ばほどの男性が俺たちを見てややうさんくさそうに問い返してくる。そこで耕介さんが一歩前にでて、自己紹介をした。
「俺は槙原耕介といいます。それから彼は高町恭也君です。食堂担当として今日からこの艦に塔乗したんですけど、乗った途端にさっきみたいな放送が流れて、ちょっと戸惑ってしまいまして。もしかしたらこの辺にきてみれば何が起こったのかもう少し詳しい状況がわかるんじゃないかと思いまして。もし、よろしければ何が起こってるのか少し教えてもらえませんか?なにか騒いでたようでしたけど。」
耕介さんの説明に男性は納得したような表情を見せて答える。
「なるほどな。ああ、そうだ。俺の名前はウリバタケ・セイヤっていうんだ。で、今の状況なんだが、放送で言われたとおり敵の襲撃を受けている。で、戦艦がドックを発進できるようになるまで、エステバリス、こいつをおとりにだして敵を引き付けるってことになったんだが。」
そういって、さきほどプロスさんに説明を受けた、機動兵器エステバリスを指さすセイヤさん。だが、そこで彼は困った顔をした。
「けどなあ、この艦にはパイロットが一人しか乗ってなくてなあ。おまけにそのパイロットがエステ、ああエステバリスの略称な。エステであそんで足の骨おっちまいやがって出撃できるパイロットがいねえんだよ。」
「って大変じゃないですか!?」
セイヤさんの説明をうけて耕介さんが叫ぶ。確かに非常事態だ。それにしても、パイロットが戦艦に一人しかいないとは一体どうなっているのだろう。おまけに遊んで足を折って出撃できないとは。この艦に乗ったのは失敗だったかもしれないと俺は少し後悔した。
「ああ、まったくまいったよ。」
頭を抑えるウリバタケさん。そんなセイヤさんに対し、俺は尋ねた。
「それって、他には動かせる人はないんですか?」
「IFSをつければ子供でも動かせるが生憎この艦でそれをつけとるのは怪我した馬鹿とルリっていう女の子だけだ。それにその子は外せねえ役についてるしよお。」
IFS・・・俺と耕介さんはこの世界にきてからこの世界の兵器や技術について調べたがその中で見たことがあるのを思い出した。確か、体内にナノマシンを注入することで自分の意思を機械に伝達し、効率的に操れるようにするシステム立ったはずである。
「じゃあ、俺にそれをつけてもらえませんか?」
「恭也君!?」
俺の発言に驚く耕介さん。セイヤさんも驚いた顔をしている。
「おいおい、あんたが出撃するってのか!?あんたコックなんだろ?」
「俺は調理補助ですよ。それはともかく、誰かがそれをやらないとまずいですし、俺は多少武術の心得があります。IFSなら思ったとおりに機械が動くんですよね?だったら何とかなると思います。」
「いや、しかし・・・・。」
ためらうセイヤさん。素人を戦場に送るのにためらうのはわかる。だが、誰かがそれをしなければ皆死んでしまうかもしれないのだ。
「大丈夫ですよ。俺の流派は戦えば勝ちます。それにこの艦が破壊されてしまえばどのみち終わりでしょう?」
「・・・・わかった。艦長に聞いてみるわ。すまねえな。」
セイヤさんは納得してくれたようで通信をいれようとする。だが、その時耕介さんが大声をあげた。
「待った!!俺にもそれを付けてくれ!」
「耕介さん!?」
そのあまりの意外な言葉に俺は驚く、耕介さんは続ける。
「いくら恭也君でも使ったことのない機械で一人で戦うなんて無茶だ。一人より二人。俺も一緒に戦うよ。それに恭也君を一人で戦わせて、もし、死なせてしまったら後で君の家族に何言われるかわからないしな。」
「俺の進もうとする道がどんなものか家族もわかっているはずです。」
そう、御神の道は死と向き合った道であり、俺が将来目指すボディーガードという職業も同様なのだ。
「理屈ではね。だからといって感情は別だよ。それに俺だって神咲一灯流の剣士だ。」
確かに耕介さんも退魔という形は違えども視線をくぐり、力なき人を守る為の道を行くひとである。それに耕介さんの決意もかたく変えられないものであることがわかり、俺はその申し出を受ける事にした。
「わかりました。お願いします。」
「ああ。あ、そう言う訳で、よろしくお願いします、セイヤさん。」
俺たちは手を握りあう。それから耕介さんがセイヤさんの方を見てお願いした。
「よし、わかった。」
答え通信をいれるセイヤさん。そして、この方向で進めることが決まると、整備員の人達は大急ぎで作業を始め、2本の注射器のようなものが運ばれてくる。その注射器も以前調べた資料の中にあったが、未来の注射器は針を必要としないらしい。
「んじゃあ、これを注射してくれ。」
セイヤさんがそう言ってそれを俺たちに渡す。俺は調べた使い方どおりにそれを腕に押し当て、注射し、耕介さんも同じようにする。体内に何かが流れ込んでくるよな感触のあと、手の甲に変な文様が浮かんだ。これで成功のはずだ。
「よし、時間がねえ。早く機体に乗り込んでくれ。それから必ず生きて帰ってこいよ。」
「「はい。」」
言俺たちが答え機体に乗り込むと、機体地上に向けて発進した。