
俺、高町恭也はまあ、結構不思議な事にはなれているほうだと思う。周囲には超能力者やら、霊能力者やら、妖狐やら、夜の一族やら、自動人形やら、人外の連中があふれているし、俺自身、世間一般の基準から見れば普通じゃない事は自覚している。それに、世の中には理不尽な事が溢れてるという事もよく知っている。だが、目が覚めたらいきなり、そこが未来の世界だというのはあんまりではなかろうか?
INFINITE JUDGE 〜第1話〜
「さて、一体どうしたものかな。」
朝、起きたらまったくの見知らぬ場所。何故か側に転がっていた2本の小太刀を持って、とりあえず歩き回ってみた結果ここがどうも未来の世界である事がわかった。西暦が2195年だというし、俺のいた時代では到底ありえない進んだ機械がいくつもある。
「どうしたら現代に戻れるんだろうか?」
俺は考え込む。元の時代ならばこう言った非常識な事態に対して、相談できる相手もたくさんいるのだがあいにくこの時代には知り合いがいない。まあ、あたり前の話だが。
「・・・・・・・神咲さんの家を訪ねて見るか。」
少し考えた後、俺はそう思いつく。神咲さんのうちは退魔の――人ならざるモノにして人に仇をなす存在、妖魔や霊を打ち倒す――家系として400年続く名家だ。この時代でももしかしたら、存続しているかもしれない。
「さて、さしあたっては・・・・・、路銀を稼がねばな。」
何せ、俺は寝姿のまま、未来に飛ばされたのだ。幸い服装は普段着といっても問題ないものだったが、金はおろか、小太刀以外何一つとして役立つものは持っていない。もっとも、金を持っていたとしてもこの時代では役に立たない・・・いや、古銭商に売れるか?まあ、どちらにしろ、ないものねだりをしても仕方がない。俺は何か仕事をする事にした。
「困った・・・・・。」
この時代では全ての国民が遺伝子登録されているらしく、この時代の人間ではない為、遺伝子登録がなされていない俺は完全に不審者扱いだった。その為仕事がまったくみつからない。
「いったいどうしたものか・・・。」
ここは佐世保らしく目的地の鹿児島とは地続きなので最悪歩いて行くという手もあるが、それにしても食料やら何やらで色々と問題がある。やはり、金は稼がなくてはならない。
どうしたものかと思案に暮れていた時、救いの手が差し伸べられた。
「恭也君!?もしかして君は恭也君か!?」
自分を呼ぶその声に後ろを振り向く。するとそこにはさざなみ寮管理人して神咲無尽流当代、槙原耕介さんがいた。
「耕介さん!?」
思わず声をあげてしまった。まさか、未来で耕介さんに会うとは思っても見なかった。
「君もこの時代に来てたのか!?」
「と、いう事はやはり、ここは未来なんですね?」
そう、確認する。だが、それに対し耕介さんは難しい顔をしてきた。
「ああ、だけど、どうやらここは唯の未来じゃないらしい。」
「唯の未来じゃない?どういうことですか?」
「実は、俺は2ヶ月も前からこの世界に来ているんだが・・。」
「2ヶ月!?」
流石に驚いた。しかし耕介さんが続けた話はさらに驚くものだった。
「それで、こっちにきてから、色々調べてみたんだが、俺たちが元居た世界とここの世界はどうやら同一のものではないらしいんだ。歴史なんかにも微妙な喰い違いがあるし、HGSや霊能力者、夜の一族等についても存在しないみたいなんだ。神咲一灯流も存在した形跡がない。」
その言葉に俺は少なからずショックをうける。これで元の時代に帰れる可能性をひとつ失ってしまった事になる。
「そうなんですか。俺はそこを頼って元の時代に帰る方法を探そうかと思ったんですが。耕介さんは他になにかよい手段を思いついていないんですか?」
俺はわずかな期待をこめて聞くが、耕介さんは首を振った。まあ、そんな方法があれば、とっくに使っているだろうから、ある程度は予測していたが。
「とりあえず、俺が今、住み込みで働いている食堂に来ないか?人のいい親父さんだから頼めばもう一人位置いてくれるかもしれない。」
「そうですね。できればよろしくお願いします。」
そうして、俺は耕介さんについてその場所へと向かった。